SaaSにおけるコンテンツマーケティングの重要性と戦略
目次
なぜSaaSでコンテンツマーケティングが重要なのか?
旧来の営業プロセスでは企業の営業部隊がビジネスの最前線に立ち、訪問や架電といったアウトバウンド手法を駆使して、見込み顧客との商談を創出するのが一般的でした。しかし、インターネットの普及によりWeb検索するだけで製品やサービスのリサーチを行えるようになったため、見込み顧客が営業と商談をすることなくプロセスを進めることが可能になりました。
そういった購買プロセスの変化に対応し、リードの獲得や商談の創出を行うことができるマーケティング手法として、コンテンツマーケティングは近年BtoB事業者のあいだでも注目を集めています。
コンテンツマーケティングでは、ターゲットのニーズが顕在化する前段階やリサーチ段階から見込み顧客と接触することができるため、リード獲得や認知獲得の有効な手段となります。
本記事では、SaaS企業におけるコンテンツマーケティングを取り巻く現状や事例を踏まえて、その有効性や実施方法をお伝えします。
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SaaS企業におけるコンテンツマーケティングの現状
2017年のCobloomによる調査では、世界的SaaS企業トップ250社のうち、89%がコンテンツマーケティングに取り組んでいることが分かっています。
この調査から分かる通りSalesforceやHubspotなどの世界的なSaaS企業の大多数が自社ブログを所有したり、ポッドキャストでコンテンツマーケティングを実践しています。調査対象企業にはレガシーな企業も含まれてるようなので、スタートアップのSaaS企業に限れば自社ブログの所有率は100%近いかもしれません。
SaaSコンテンツマーケティングのROI
2019年のFunderaよる調査では、ブログに注力しない企業よりも注力している企業の方がROIが13倍になる可能性があります。
また、2011年のHubspotによる調査では、インバウンドマーケティングを中心に行う企業はアウトバウンドマーケティングを中心に行う企業よりもリードあたりのコストが62%低くなっています。
すでに認知形成されている場合であれば、アウトバウンドマーケティングでもROIを一定以上で担保できるかもしれませんが、一般的にはインバウンドマーケティングの方がアウトバウンドマーケティングよりリード獲得のROIが高いマーケティング手法だと言えそうです。
さらに、オウンドメディア「AIアナリストブログ」を運営しているWACULが公表しているプレスリリース内の下掲のグラフでは、コンテンツをアセットとして積み上げていくと時間経過とともにCPAが改善し先行投資を回収できるようになることが伺えます。
CPAが改善できればROIも高まることが期待できるため、この結果からもコンテンツマーケティングがROIを高めながらリードを獲得できる施策だと言えるかもしれません。
これらの調査から分かるように、コスト効率を維持しながらリード獲得をしていくためにはコンテンツマーケティングが有効な手段となり得ます。
中長期的に正常なユニットエコノミクスを保ちながら商談やリードを創出するためにも、まだコンテンツマーケティングを実施していない方は積極的に検討する余地があるかと思います。
コンテンツマーケティングの基礎知識
コンテンツマーケティング戦略を考えるうえでは、まず基本的な知識をインプットする必要があります。そのため、コンテンツマーケティングの基本となる「コンテンツの種類」と「主なコンテンツの拡散方法」を把握しておきましょう。
主なコンテンツの種類
まず「コンテンツの種類」には大きく2つあり、「お役立ち情報系」と「PR系」に分ける事ができます。それぞれの大まかな特徴は以下の通りです。
- お役立ち情報系
- ノウハウやTips、市場動向に関するレポートによる情報発信
- トラフィックを多く獲得しやすいが、ニーズが顕在化していない見込み顧客も多く実名化するまでのリードタイムは長くなりやすい
- PR系
- 事例や競合比較、製品に関わるニュースなどによる情報発信
- 導入意向の高まっている顕在層にアプローチするためトラフィックは少ない(認知がある場合はその限りではありません)
- ニーズが顕在化している可能性が高いため、実名化するまでのリードタイムは平均的に短い
2017年のCobloomによる調査では、世界的SaaS企業トップ250社のうち「お役立ち情報系とPR系の両方」をブログで公開するアプローチが全体の45%と最も多く採用されていました。次いで「お役立ち情報系のみ」、最も少ないのが「PR系のみ」という割合となっています。
「お役立ち情報系とPR系の両方」の割合が多い理由としては、トラフィックを多く獲得しリード獲得に有効な「お役立ち情報系」と、トラフィックは少ないものの有効リードや商談獲得に繋がりやすい「PR系」の2つを発信することで、両方のメリットを教授するためと考えられます。
なお、弊社のBtoB特化メルマガでは、登録者限定でお役立ち情報系とPR系それぞれの施策ごとに商談化率や有効リード率、獲得単価などの実数字を公開するなど、あまり公に出すことができないBtoBマーケティングの実例を公開しております。
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主なコンテンツの拡散方法
次に「主なコンテンツの拡散方法」についてです。
全ての方法は取り上げませんが、主な拡散方法とその特徴をご紹介させて頂きます。
- ソーシャルメディア
ソーシャルメディア内で構築したコミュニティにコンテンツを発信することで、リードジェネレーションやナーチャリングなどのプロセスを促進することが可能です。
「コンテンツは火、ソーシャルメディアはガソリン」と言われるほどに、バズった時は驚異的なスピードでコンテンツが拡散していくのが特徴です。
Twitter、Facebook、Instagram、YouTube、Pinterest、LinkedInなどのプラットフォームが存在します。
- ブログ
先述した通り、世界的なSaaS企業の大多数が自社ブログを所有しており日本でもコンテンツ拡散の代表的な手法となっています。
2019年のFunderaよる調査では、BtoBマーケターの76%はブログからのリード獲得に成功しているという結果が出ておりブログによるコンテンツマーケティングの有効性が伺えます。
- ポッドキャスト
2017年のCobloomによる調査では、世界的SaaS企業トップ250社のうち18%がブログだけでなくポッドキャストも持っていることが分かっています。
2020年の調査では、米国の12〜32歳の49%がポッドキャストを聴いており、週に平均6時間聴いていることが分かっています。それが米国で多くの企業がポッドキャストを所有し始めている背景となっています。
ちなみに日本では現場向けSaaS「カミナシ」を開発・提供する株式会社カミナシがGoogleのPodcastで「カミナシSaaS FM」を配信しています。
- 動画
Wyzowlの調査によると、「動画コンテンツはコンバージョンを促進し、ROIを向上させオーディエンスとの関係を構築するのに役立つ」と企業のマーケターが回答しています。
ブログ記事を書くよりも少し手間のかかる方法ですが、この調査結果から分かる通りリード獲得への有効性が伺えるため積極的に検討したい施策だと考えられます。
- 運用型広告
有料施策のため自然流入よりもCACは高くなりますが、運用型広告にコンテンツを活用することでインバウンドマーケティングを強化し、リーチの拡大と即効性のあるリードジェネレーションが可能になります。
ホワイトペーパーやアーカイブ動画などのコンテンツ形式にしてダウンロードフォームを設置するなど、広告効果を測定しつつ効率的にリード獲得へ繋げる事も大切なポイントです。
「LTVが高くCACの増加が許容できる」「資金調達を行い十分な予算が確保できる」などの場合であれば、運用型広告も積極的に検討できる選択肢になるでしょう。
下記の記事では、運用型広告でホワイトペーパーを活用しリード獲得を行った事例とそのメリット・デメリットを解説しておりますので、併せてお読みいただけますと幸いです。
コンテンツマーケティング戦略の検討ステップ
コンテンツマーケティングの雄である「HubSpot」が提唱するコンテンツマーケティング戦略の検討ステップは以下の通りです。
- 目標を設定する
- KPIを決める
- コンテンツを決める
- チャネルを選択する
- 予算を決める
- コンテンツを作成し発信する
- 測定結果を分析する
さまざまなコンテンツマーケティング戦略の検討方法があるかと思いますが、本記事では上記のステップ参考に筆者の解釈も交えながら各ステップのポイントを説明させて頂きます。
- 目標を設定する
HubSpot の記事ではこのプロセスで「具体的」「測定可能」「達成可能」「関連性」「期限付き」の要素からなる、SMART目標を設定することを推奨しています。
目標:週ごとの記事公開数を5件から8件に増やすことで、今年中にブログ経由の月間リード獲得数を10%増やすこと
・ 具体的(Specific):毎週の記事公開数を5件から8件に増やし、リード獲得数の増加に繋げる
・ 測定可能(Measurable):ブログからの月間リード獲得数を10%増やすこと
・ 達成可能(Attainable):毎週の記事公開数を2件から5件に増やしたときに、リード獲得数が20%増加したため、8件に増やすことで更なる獲得が見込める
・ 関連性(Relevant):リード獲得を増やすことで、より多くの商談を創出し、受注獲得の機会を増やす
・ 期限付き(Time-Bound):今年中に達成
「目的や目標を定めずにコンテンツを書き続けた結果、期待した効果が得られなかった」という事態を避けるためにも、最初の段階でしっかりと目標設定を行い施策に取り組むことが大切です。
- KPIを決める
このプロセスでは、目標に対する実際のパフォーマンスを測定するために必要なKPIを設定します。
例えば目標が「ひと月の商談数を○件増やす」である場合は、以下が関連するKPIとなります。
・ CRMのリード増加数や有効リード数、商談数
・ 問合せや資料請求のCV数
もちろんブログ運営で代表的な指標であるトラフィックなども重要な指標ではありますが、「トラフィックは増えたもののリード獲得に繋がっていなかった」ということも起こりうるため、KPIは目標に関連の深い指標を選ぶことが大切です。
また、施策の評価を正しく行うために、モニタリング環境を構築することも有効です。
環境構築により「どこのチャネルから、どのコンテンツで、どんなリード獲得したか」が計測可能になり、コンテンツマーケティング戦略のパフォーマンスをより正しく測定することが可能となります。
- コンテンツを決める
次に、作成するコンテンツを決めます。このステップでは、ターゲットの課題やニーズに対応したコンテンツを考える事が必要です。
また、先述した通り「PR系」と「お役立ち情報系」のコンテンツで特徴が異なるため、目的・目標に応じてコンテンツの内容を変えていくことも大切です。
具体的には「顕在層の問い合わせ獲得」や「プロダクトのブランディング」が目的であれば「PR系」のコンテンツ、「トラフィックの増加」が目的であれば「お役立ち情報系」のコンテンツというように目的に応じたコンテンツ作成を行うということです。
すでにペルソナやカスタマージャーニーがあれば、その情報をもとにコンテンツを作成するのも有効ではないかと思います。
- チャネルを選択する
ブログやSNSによる情報発信が主となる場合が多いと思いますが、ターゲット属性や目的、予算によっては運用型広告などの有料施策も有効な一手となります。また、リード獲得が目的であれば、ホワイトペーパーダウンロードや問い合わせなどのCTAの配置を見直すことも検討してみると良いかもしれません。
- 予算を決める
次に以下の項目を確認しながらコンテンツ制作とチャネルに関する予算を決定ます。
・ コンテンツ作成のためのツールやクリエイティブ素材の調達コスト
・ マーケターやデザイナーへの業務委託コスト
・ 運用型広告などの有料施策のコスト
・ コンテンツの内容を裏付けるためのリサーチや調査レポートにかかるコスト
これらの項目を確認しながら予算策定を行い必要に応じて修正を行います。
「いざ始めてみたらリソースが無かった」「思っていたよりコストが膨らみ頓挫してしまった」という事態を避けるためにも、最初の段階で解像度を高く持っておくことが大切です。
- コンテンツを作成し発信する
このプロセスではスケジュールと決定した配信チャネルに従ってコンテンツ作成し公開します。
HubSpot の記事では適切な進捗管理を行うためにも「公開日」「チャネル」「コンテンツの内容」などを一覧化したスプレッドシートを作成・運用する事が推奨されています。
- 測定結果を分析する
最後に結果を分析し、必要に応じて施策に変更を加えてPDCAを回していきます。
最初に決めた期日と目標および達成進捗の確認を行いコンテンツマーケティングの成功を判断します。
SaaSコンテンツマーケティングの事例紹介
弊社が運用型広告領域でご支援させていただいている、jinjer株式会社様の「HR NOTE」をご紹介させて頂きます。
HR NOTEは「人事の成長から、企業の成長を。」をコンセプトとして、人事向けの記事、セミナ―情報、お役立ち資料などのコンテンツを発信しているメディアです。
ほぼ毎日更新されている充実した記事コンテンツをはじめとして、資料ダウンロードやウェビナーなどの動画コンテンツが網羅的に公開されています。
また、求める情報に辿り着きやすくするためのカテゴリ分けやタグ付けがなされており、ユーザー視点でUI・UXが考えられています。
下記リンク先の特集記事では「ユーザーの課題解決に貢献するためのコンテンツ作りのポイント」などがまとめられていますので、ぜひこの機会にご一読ください。
まとめ
戦略的なコンテンツマーケティングを展開することで、施策のROIを改善したりリード獲得数の増加が期待できます。弊社の運用型広告支援においても、コンテンツマーケティングの知見を活用して、SaaSをはじめとするBtoBのリード獲得や商談獲得に尽力して参りました。
今後は実際の支援事例など、より実践的な内容を交えてBtoBマーケティングに役立つ情報発信を行って参りますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
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