【BtoB/SaaS】マス広告が指名検索広告に与える影響
様々な外部環境の変化やマーケティング施策の実行によって、運用型広告のパフォーマンスは影響を受けます。そして、「マス広告」も運用型広告に影響を与える要素の一つです。
本記事では「マス広告が指名検索広告に与える影響」について、実際のBtoB(SaaS)の広告支援事例を用いて、取り組みとその結果に対する考察をご紹介いたします。
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目次
前提
本事例の前提は以下の通りです。
- 業種:SaaS(非バックオフィス向け)
- 検証事項:TVCMの放映と並行して指名検索広告を配信することでパフォーマンスに与える影響を検証
- 検証媒体:Google検索広告(指名検索広告)
- 検証したKPI:リード獲得単価/有効リード獲得単価(※)
- CVポイント:問い合わせ/資料請求
- 検証期間:CM放映前後含めて60日間(CM放映期間は21日目〜45日目までの24日間)
- マス広告の概要:タレントを起用したストーリー調のTVCM
※リード単価:重複や既存顧客を除外したリードの獲得単価
※有効リード単価:重複や既存顧客の除外および競合や個人など無効リードを除外したリードの獲得単価
結論
本支援におけるマス広告の指名検索広告への影響として、以下の3点の仮説が立ちました。
- 広告ランクに影響を与える「推定クリック率向上」によってCPCが最大1/9まで低下
- 潜在層ユーザーの増加に伴う一時的な「トラフィック増加」と「獲得率低下」
- CM放映終了直後の残存効果によって、一時的にリード・有効リードの獲得単価が最大1/5まで抑制
以下のパートで実際の取り組みと結果の詳細を共有いたします。
取り組んだこと
非バックオフィス向けSaaSの運用型広告支援において、TVCMの放映に合わせて指名検索広告のパフォーマスがどのように変化するかモニタリングしました。
モニタリングを行なった期間は「放映前21日間」「放映中24日間」「放映後15日間」の計60日間です。
この60日間の間に「リード獲得単価」と「有効リード獲得単価」をKPIとして、各指標の変動をモニタリングしました。
なお、モニタリング期間においてアカウント構成や広告・LPの変更は行っていません。
結果と考察
結果は以下の通りです。
(※社外秘データのため、結論や考察に影響が出ない程度に補正を加えています)
CM放映開始してから放映終了後1週間の間に、大まかに指名検索のパフォーマンスに4段階の変化(フェーズ1〜4)が確認できました。
時系列の推移
- CM放映前(1〜21日)
- コスト、獲得単価ともに大きな変動はなく安定
- フェーズ1(22〜29日:CM放映直後)
- CM放映初動、コスト増加とともにリード単価・有効リード単価が上昇
- フェーズ2(30〜45日:CM放映から1週間経過)
- CM放映2週目以降、コスト減少とともにリード単価・有効リード単価が改善に転じる
- フェーズ3(46〜52日:CM放映終了直後)
- CM放映終了、コスト減少とリード単価・有効リード単価の改善がさらに進む
- フェーズ4(53〜60日:CM放映終了から1週間経過)
- リード単価・有効リード単価ともに上昇傾向に転じる
フェーズ毎の各指標の数値とその考察
段階ごとの各指標の数値は以下の通りでした。
- フェーズ1(22〜29日:CM放映直後)
- CPCの低下
CM放映開始直後から明らかにIMPとCTRが向上し、それに伴いクリック数が増加したことで放映前よりも一日あたりのコストが1.8倍程増えています。
しかし、CPCが大幅に低下したことによりクリック獲得の効率は高まっていることが分かります。
なぜCPCを抑制できたのかというと、CTRの向上により広告ランクに影響を与える「推定クリック率」も高くなったと推察され、放映前よりも入札で有利になっていると考えられます。
- 獲得単価の上昇
一方でリード・有効リードの獲得率は6分の1ほどに低下しており、獲得単価上昇の直接的な要因となっています。
これは恐らく、CM放映直後は「喫緊の課題はないがCMを見て興味本位でサイト訪問したユーザー」のような潜在層の流入が多くなるため、「問い合わせ」「資料請求」などではCV獲得に至りにくく、結果的に獲得率の低下を引き起こしたと考えられます。
- フェーズ2(30〜45日:CM放映から1週間経過)
- 獲得単価の低下
フェーズ1においてCM放映前よりも上昇していた獲得単価が、フェーズ2では大幅に低下していることが分かります。
この獲得単価低下の主要因はCPCの低下であり、フェーズ1と比較してフェーズ2のCPCは半分以下に低下しています。
恐らく、フェーズ1から継続的にCTRが高い状態が続いたため「推定クリック率」の評価がさらに向上し、フェーズ1よりも入札単価を抑えてオークションに参加できるようになったものと考えられます。
- フェーズ3(46〜52日:CM放映終了直後)
- 獲得単価の更なる低下
CM放映が終了したのにも関わらず、獲得単価はフェーズ2よりも低下しています。
リード・有効リードともに獲得率が4倍以上に向上したことが獲得単価低下の要因です。
獲得率が向上した要因としては、CM放映終了後は潜在層である「喫緊の課題はないがCMを見て興味本位でサイト訪問したユーザー」が減少し、CMの残存効果によって導入意向の高いユーザーが残ったことで顕在層の割合が増えたのではないか、と考えられます。
- フェーズ4(53〜60日:CM放映終了から1週間経過)
- 獲得単価が上昇に転じる
獲得単価は低い水準を保っているものの、CM放映終了から1週間経過したタイミングでリード・有効リードともに獲得単価が上昇に転じました。
そして、IMP・CTR・獲得率が放映前の水準に戻っていることから推察するに、CMの残存効果が薄れてきたタイミングだと考えられます。
しかし、CPCは上昇しているものの放映前の半分程度を維持しており、CM放映による何かしらの影響が残っていると考えられます。(CM放映中に競合入札が減少した、依然としてオークションでは有利、など)
※リード獲得率=リード獲得数/クリック数
※有効リード獲得率=有効リード獲得数/クリック数
まとめ
ここまで「マス広告が指名検索広告に与える影響」についてご紹介しました。
改めて、本支援における今回の検証結果として、以下の3点の仮説が立ちました。
- 広告ランクに影響を与える「推定クリック率向上」によってCPCが最大1/9まで低下
- 潜在層ユーザーの増加に伴う一時的な「トラフィック増加」と「獲得率低下」
- CM放映終了直後の残存効果によって、一時的にリード・有効リードの獲得単価が最大1/5まで抑制
BtoB向けのSaaSにおいてCM放映が増えてきているため、今後、CM放映をお考えの企業は是非計画設計の参考にしていただけると幸いです。
今後検証すべき論点
また、今後も引き続き検証すべき残論点としては、以下の4点があると考えています。
- 各フェーズの課題設定と対応はどうするべきか?
・ 潜在層リードへの対応
・ 潜在層のトラフィックに対応したCVポイントやコンテンツの設計
・ 潜在層リードをナーチャリングするためのメールマーケティングの設計
・ リード数増加に伴うインサイドセールスの負担増加への対応
・ 放映終了後の非CVユーザーの獲得 - 一般検索へ応用できる部分はあるか?
(今回は広告の入れ替えを幾度か行い、指名検索よりも変数が多いため検証ができていません)
・ CTRの向上によるCPCの抑制効果は一般検索でも当てはまるのか?
・ 放映終了後のCVRの向上は一般検索でも確認できるのか? - マス広告は有効リード以降の後続プロセスにも影響するのか?
・ 商談化や受注獲得にも効果があるのか? - CM放映の効果はどれくらい継続するか?またどのくらい行えば定着するのか?
上記に関しても引き続き検証を行い、実践に役立つ情報を順次公開していきたいと思います。
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