インテントマッチ(部分一致)環境下における「キーワード手動追加」との向き合い方

GoogleやYahoo!などの媒体社がインテントマッチ(部分一致)を推奨するようになって久しいため、多くの検索広告アカウントではインテントマッチ(部分一致)が活用されているのではないでしょうか。

また2024年7月からはGoogle広告で新しいキャンペーンを作成した際に、登録したキーワードはデフォルトで「インテントマッチ(部分一致)」を使用するようになりました。(引用:Google広告ヘルプ「インテント マッチのご利用ガイド」

そのようなインテントマッチ(部分一致)の一般化によって悩ましいのが「インテントマッチ(部分一致)で多様な検索語句に掲載ができている中で、どこまで手動でキーワードを追加すべきか」という点ではないでしょうか。

例えば「検索広告の成果改善のためにキーワードの追加を行いましょう」とか「CV数を増やすために、CVの出ている検索語句を完全一致でアカウントに追加しましょう」「キャンペーンの完全一致率をあげるために、キーワードの追加を行いましょう」など、こういったキーワード追加に関する提案を受けた経験がある方も多いと思います。

一方で昨今の広告運用においては、さまざまな機能に機械学習が活用されており、人間が手を加えることが必ずしも正解ではなくなりつつあります。

だからといってインテントマッチ(≒機械)にまかせる部分が多いのも不安があるため、はたしてどこまで任せて良いのかと悩むことは自然かと思います。

そこで、本記事では「インテントマッチ(部分一致)環境下の検索広告において、キーワードはどこまで追加するべきなのか」、その必要性をまとめていきます。

「インテントマッチ(部分一致)の割合が高いと、なんとなくサボっているように思われる」とか「もっと人間が細かく調整した方が成果が良くなるんじゃないか」といった感覚的な理由ではなく、また「媒体がインテントマッチ(部分一致)を推奨しているから完全一致は必要ない」といった媒体推奨を過信するスタンスでもなく、あらためて原理原則に則ってキーワード追加の必要性を整理してまいります。

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昨今の検索広告におけるキーワードの媒体推奨設定

まず前提となる媒体推奨設定からまとめますと、現在の検索広告では「インテントマッチ(部分一致)×スマート自動入札」が媒体の推奨となっています。

なぜ上記が媒体の推奨設定なのか理解いただくために、前提となるユーザーの検索行動を紹介します。実はユーザーの検索語句は今も日々新しいものが生まれており、Google社によれば、「毎日発生する何十億件もの検索語句のうち15%は、それまでになかった新しいものです」という事実もあります。

つまり広告の掲載トリガーとなる検索語句は常に広がりを持って多種多様に発生し続けている状況です。

一方で、そういった検索語句に広告を掲載するには広告アカウントにキーワードを追加する必要がありますが、数年前までは絞り込み部分一致やフレーズ一致など人間が手動で対応する部分がほとんどでした。

人間が手動で対応することでそのための工数であったり、人間の想像が及ぶ範囲での拡張という観点から、どうしてもボリュームの大きなキーワードに入札が集中し、ロングテールのキーワードに対して広告掲載が出来ない、もしくはなおざりになってしまうことが多くなっていました。

このように、特定の検索ボリュームの大きなキーワードに入札が集中することで、特定キーワードの競合性が高まってしまい、結果的に広告主が目標とする成果に見合いづらくなる状況が発生してしまいます。

そうなると検索画面への広告掲載が少なくなってしまうことに繋がり、GoogleやYahoo!などのプラットフォームとしても嬉しくない状況になってしまいます。

そのような負のスパイラルを解消するために、Googleではインテントマッチ(部分一致)でしか活用できない特殊なシグナルを用意してインテントマッチ(部分一致)の獲得効率を向上させたり、公式のヘルプページにおいてもスマート自動入札とインテントマッチ(部分一致)を組み合わせることで成果改善を果たした事例を多く掲載したりすることで、インテントマッチ(部分一致)の活用を促進しています。

平均すると、フレーズ一致キーワードと絞り込み部分一致キーワードを部分一致に切り替えた広告主様は、コンバージョン数の増加、およびコンバージョン値の改善に成功しています。(引用:Google広告ヘルプ「インテントマッチとスマート自動入札でビジネスの成長を促進」

こういったユーザーの検索行動と広告主/プラットフォームの思惑からインテントマッチ(部分一致)×スマート自動入札が媒体の推奨となっています。

インテントマッチ(部分一致)×スマート自動入札が推奨とされる環境下で、どういう時にキーワードを追加するべきか?

本記事のテーマであるキーワード追加の必要性に話を戻します。

インテントマッチ(部分一致)が他のマッチタイプと比較して特殊なシグナルを活用しており、コンバージョン数も見込みやすいのであれば、フレーズ一致や完全一致のマッチタイプにてキーワードを手動で追加する必要はあるのでしょうか。
結論としては下記2つの目的がある際は追加を検討したほうが良いと考えています。

1.インテントマッチ(部分一致)が反応しない検索語句に広告を掲載したい場合

インテントマッチ(部分一致)は最も広範にキーワードが拡張される機能のため、インテントマッチ(部分一致)で登録したキーワードに類する関連語句は広告掲載されるケースが多いです。

ただし、それでも万能ではないため特定の掛け合わせ語句や新たにビシネスの対象となる検索語句が発生した際には手動で追加するほうが好ましいケースがあります。

一方で、広告掲載の仕組みにて後述しますが、特定の検索語句に対して広告が掲載されるかどうかは、広告アカウントに登録しているキーワードよりもLPや広告文の方が重要となるため、キーワードの追加だけを行っても意図した結果にはならない可能性があります。

もし本目的でキーワードを追加するならば、あわせて広告文やLPにも新しいキーワードを反映させるほうが望ましい結果になると思います。

2.ユーザーの検索語句と広告の関連性を上げたい場合

検索エンジンの理想は、「ユーザーの検索ニーズに対してぴったり一致する関連性の高い情報を返すこと」です。
そのため広告文にユーザーの検索語句を反映することは広告の成果に大きく関わりますが、インテントマッチ(部分一致)は広範な検索語句に反応してしまうため、ぴったり一致する情報を返すのが難しい場合があります。

そこで完全一致やフレーズ一致のキーワードを追加し、それらに広告カスタマイザやキーワード挿入機能を活用することで広告文と検索語句の関連性を高めることが可能になります。

このような目的でインテントマッチ(部分一致)中心のアカウントにキーワードを追加することは有効であると考えていますし、実際に弊社支援においても、特に②の目的でキーワードを追加するケースは多いです。

一方で②の注意点として、「広告文の合致性を上げることで生じる改善期待値」と「インテントマッチ(部分一致)でimpをまとめておくことで生じる改善期待値」のどちらが高そうかを考えて意思決定を行う必要がある、こともお伝えしておきます。

全ての検索語句に対して広告文と合致させたほうが成果が良くなるかというとそういうわけではなく、キーワードをまとめておいたほうがimp量が増えることでキーワードの学習が進み、適切な入札が行える場合もあります。

最後に注意点ですが、広告アカウントに手動でキーワードを追加するということはその分の作業が発生するため、その対応がなければ行えた別の広告改善のことも考える必要があります。

前述したように、日々新たな検索語句が生まれているため、広告文との合致性を完璧に行うことは現実的ではありません。

やみくもにキーワードの追加をするのではなく、追加を考えているキーワードのimpがどれくらいあるのか、現行のままではユーザーの検索意図と広告文が合致していないのか、この対応をしないことで何が変わりにできるのか、などキーワードを追加するメリットを考えた上での対応を行う必要があります。

今回紹介した2つの理由が当てはまった際も「追加を検討」と曖昧な表現としているのは、キーワードを追加するメリットが大きいのかを考えていただきたいためで、絶対に追加しなければいけないわけではございません。

追加を行う目的はなにか、その目的を果たすには本当にキーワード追加が必要なのか、今一度立ち止まって対応することをおすすめしています。

「キーワード追加が有効」と考えてしまうよくある誤解3選

一方で、下記のような目的でキーワードを追加しているアカウントを見かけますが、本来的にはあまり推奨しない目的となっています。

それらを紹介するとともになぜ推奨しないのかを、簡単に紹介いたします。

ケース1.特定の掲載語句の表示回数を高める目的で部分一致をフレーズ一致や完全一致に変更したいと思うケース

よくあるケースで部分一致を完全一致やフレーズ一致など絞り込むことで、何かしらの理由で出やすくなると誤解して、キーワードを追加するケースがあります。

これは2つの理由から誤りです。

理由1:広告が掲載されるか否かはキーワードではなく広告文やLPを起点としている

インテントマッチ(部分一致)で掲載はできているが、さらに表示回数を高めたい目的で完全一致やフレーズ一致で切り出そうと考えることがあります。

ただしこのケースの多くは「キーワードを起点に広告掲載がされると考えていること」が誤解の要因となっています。

運用者の視点では、ユーザーの検索語句と広告アカウントに登録しているキーワードが照合されて、そのキーワードが追加されている広告グループの広告文が掲載されているように感じるかもしれませんが、そのようなキーワードを起点とした理解は誤りです。

実際は、ユーザーの検索語句に対して関連する広告文やその先のランディングページを照合し、その広告文が含まれる広告グループにキーワードが含まれていれば広告を掲載するという処理をしています。

つまり広告を掲載するか否かはユーザーの検索意図を解消できるような「広告」があるかどうかで判断しています。

オークションの仕組みは次のとおりです。

  1. ユーザーが検索を行うと、その検索内容と一致するキーワードが設定された広告がすべて検出されます。
  2. 検出された広告のうち、別の国をターゲットとする広告やポリシー違反に基づいて不承認となっている広告など、対象外の広告は無視されます。
  3. 残った広告の中で広告ランクが十分に高いものだけが表示されます。広告ランクとは、入札単価や広告の品質、広告ランクの最低基準、ユーザーの検索状況、広告表示オプションやその他の広告フォーマットの見込み効果に基づいて算出されるスコアです。
    (引用:Google広告ヘルプ「オークション」

このように、実際のオークションではキーワードを起点に広告を掲載するか否かを判断していないため、キーワードを追加しても表示回数に影響を与えないことがあります。

理由2:キーワードが同じであれば、インテントマッチ(部分一致)も完全一致も表示回数は変わらない

こちらはより言葉の持つ印象論に近いのですが、インテントマッチ(部分一致)よりも完全一致のほうが絞り込まれている分、表示回数が増えそうな印象をもつことがありますが、キーワードが同一であればマッチタイプによって表示回数が変わることはありません。

2 つのマッチタイプを比較した場合、より広範囲のマッチタイプでキーワードを指定した場合に一致する検索には、より狭い範囲のマッチタイプで同じキーワードを指定した場合に一致する検索はすべて含まれます。

つまり、あるキーワードをフレーズ一致で指定した場合に一致する検索には、同じキーワードを完全一致で指定した場合に一致する検索はすべて含まれます。

同様に、あるキーワードを部分一致で指定した場合に一致する検索には、同じキーワードをフレーズ一致または完全一致、および関連キーワードで指定した場合に一致する検索がすべて含まれます。

したがって、部分一致 1 つを使用すれば、同じキーワードを繰り返し指定しなくても、複数のマッチタイプを使用した場合と同じメリットを得ることができます。
(引用:Google広告ヘルプ「キーワードのマッチタイプについて」)

同様に混同しやすい用語として「完全一致のインプレッションシェア率」もあります。こちらをマッチタイプの完全一致の割合だと捉えて「完全一致のキーワードを増やそう」と思ってしま

う可能性もありますが、マッチタイプを問わず検索語句とキーワードが一致した広告の掲載状況を示しています。

完全一致のインプレッション シェアは、キーワードと完全に一致する検索語句で広告が実際に表示された回数を、完全一致で表示される可能性があった回数(推定値)で割った割合です。
(引用:Google広告ヘルプ「完全一致のインプレッション シェアについて」)

いずれにせよマッチタイプのなかで優劣はありませんので、インテントマッチ(部分一致)を完全一致に切り替えることのみで成果を期待するのは難しいです。

ケース2.インテントマッチ(部分一致)よりも完全一致のほうが品質スコアが高くなると考えているケース

もう一つのよくある誤解は品質スコアが完全一致のほうが高くなると考えているケースですが、同一のキーワードに対してインテントマッチ(部分一致)か完全一致かで品質スコアが変わることはありません。

部分一致のほうが広範に広がるため、相対的に関連性の薄いキーワードに掲載され、品質スコアが下がってしまうように感じられるかもしれないですが、品質スコアはそのような評価にはなっていません。

品質スコアは、キーワードと完全に同内容の検索に対するインプレッション実績に基づく評価のため、キーワードのマッチタイプを変更しても品質スコアには影響しません。
(引用:Google広告ヘルプ「検索キャンペーンの品質スコアについて」

品質スコアの評価に活用されるものは検索語句に「完全に同内容」のキーワードですが、ここでの「完全に同内容」とは、前述した完全一致のインプレッションシェア同様に、マッチタイプの完全一致ではなく検索語句と完全に一致するという意味での完全一致となっています。

そのためインテントマッチ(部分一致)だと評価されないということはないですし、完全一致のほうが同一語句に対して評価が上がりやすいということもありません。

もちろん前章でまとめたように広告文との関連性の向上含めてキーワードを追加することは品質スコアを上げうると思いますが、それはインテントマッチ(部分一致)からマッチタイプを変更したことではなく、別の要因により向上した結果になります。

ケース3.管理画面の数字改善そのものを目的にしてしまうケース

最後に広告運用に限らずよくあるケースとして、数字があることで「数字そのものの改善」を目的にした改善活動を行ってしまうケースで、いわゆる「手段の目的化」にあたります。特に運用型広告は情報の非対称性が高いため、数字の持つ意味ではなく、数値の単純な高低をもとに低いことが悪であるように捉えてしまうケースがあります。

ここまで何度か言及した完全一致の取り扱いなどはその典型例で、アカウント内に登録している「キーワードの完全一致の表示割合」が低いことを悪と捉える風潮がありますが、低いことそのものは必ずしも悪ではありません。

これまで説明してきたように完全一致を活用することで「未掲載の検索語句への広告掲載」をおこなったり、「ユーザーの検索ニーズに合致した広告文」とすることができます。そのため、アカウントに登録されている完全一致の割合が低かったとしても、上記目的が達成されているのであれば大きな問題はありません。

具体的な状況として下記のような掲載状況をもとにこの問題を説明します。

このキャンペーンでは「オーリーズ」のみがキーワードで登録されている状態で、上記画像の広告文を掲載していたとします。「オーリーズ」の表示回数が30、その他登録していない2つのキーワードが合計45の表示回数とすると、このキャンペーンでは完全一致のキーワードが30imp、キャンペーン全体の合計impが75となり、完全一致での表示割合は40%となります。

40%という数字を見ると確かに完全一致の表示割合に改善余地はありそうですが、果たして数値を改善することで成果の期待が見込めそうでしょうか。

今までお伝えした観点である広告表示回数の増加や、検索語句と広告文との合致性の観点から考えるとキーワードを追加したとして広告効果の改善はあまり見込めなそうです。そのため、このようなケースでは数字が低かったとしても施策の優先度は低そうだと捉え、改善活動は行わない=他の施策を優先する方が良いと考えます。

もちろん今回の例は簡略化した説明のため、現実はもっと複雑な状況になると思いますが、少なくともお伝えしたかった「必ずしも数値が低いことが悪ではない」ことを理解いただけたかと思います。

運用型広告では多くの数値を扱うことが多いため、盲目的に数値の改善を目指してしまうと結果的に無駄の多い作業をしてしまう可能性もあります。

数値の改善そのものを目的にするのではなく、数字の背後にある意味を理解し、その対策を行うことが本当に価値のあることなのか、慎重に判断することでより良い広告アカウントの実現につながると考えています。

まとめ

インテントマッチ(部分一致)が一般化しているなかでどこまでキーワードを追加すべきかについては「表示機会の拡張」「ユーザーの検索語句と広告文の合致性」の2点からお伝えしてきました。

またそれらが発生していたとして実際にそれらの改善目的で行うかどうかは各広告主の個別事情に左右されます。

キーワードをどこまで追加すべきかを改めて考えれば、それは「広告の成果をいかに最大化するか」につながる問いであり、成果最大化を達成するための資源である「ヒト・モノ・カネ」をどこまで投下して達成することが最もバランスが良いかを考えることだとも思っています。

そのため、キーワードを追加して数%でも改善をすることが重要な局面もあるかと思いますし、数%の改善インパクトでしかないのであればインテントマッチ(部分一致)に大部分を任せ、運用者は広告文やLPなどクリエイティブにリソースを割く方が合理的な局面もありうると思います。

今回は検索広告におけるキーワードをテーマに日々の運用調整の話をしましたが、大事なことはキーワード追加に限らず媒体推奨やだれかの提言を鵜呑みにするのではなく、主張の背景にある原理原則を理解した上で、いま自分が置かれている環境でどのような改善手法を取り入れるのかを決定することだと思います。

本記事がみなさまのより良い広告アカウント運用の一助になれば幸いです。

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