広告アカウントの分割・統合で迷ったら-判断の観点と注意点について解説します
同一業種で複数サービスを展開している場合や、フランチャイズ形式で店舗ごとに広告アカウントを管理している場合、「広告アカウントは分割すべきか?統合すべきか?」といった疑問が生じるのではないでしょうか。
今回の記事では、広告アカウント管理の方法に関して、分割する場合と統合する場合それぞれのメリット・デメリットに触れながら、ケースごとで認識しておくべき事項について解説しています。
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目次
広告アカウントは分割すべきか、統合すべきか
1広告主1アカウントの原則とその例外
通常、1つの広告主に対して広告アカウントは1つとなるケースがほとんどです。
媒体社の中でも「1広告主1アカウント」が原則ルールとして設けられており、この原則によって1広告主による配信面の独占を避けることができています。
一方、同一企業が異なるサービスを展開している場合や、異なるドメイン、屋号でサービスを複数展開している場合は、上記の原則からは外れることになります。
では、このような広告主の場合、広告アカウントは複数に分割した方が良いのでしょうか?もしくは原則通り1つにまとめた方がよいのでしょうか?
何を優先したいかで判断するのがベター
広告アカウントを分割すべきか・統合すべきかの判断は、結論広告配信で何を優先したいかによって変えるのがベターです。
以下のように、予算やKPI・運用に充てられる工数・サービス名などを踏まえて判断すると良いでしょう。
- アカウントを統合して運用するのがおすすめの場合
- 予算やKPIは分かれておらず、結果の最大化を重視したい
- 運用に充てられる工数が多くなく、管理工数は極力節約したい
- サービス名が全く同じで、広告が競合するとユーザーが混同する可能性が高い
- アカウントを分割する方がおすすめの場合
- KPIも予算も異なるため、配信が出ない、獲得が少ない状況は避けたい
- 代理店に運用を委託しているなど、複数のアカウントになっても適切に運用できる工数が確保できる
- サービス名が異なり、広告が競合してもユーザーが混同する可能性が低い
広告アカウントを分割・統合するメリット・デメリット
広告アカウントを分割or統合したほうが良いかの判断は各広告主の優先事項次第としましたが、まずは検討する上でのメリット、デメリットを整理します。
広告配信の仕組み(Google検索広告の場合)
前提として、広告を表示するためには、入札単価や広告の品質など主に5つの要素によって掲載されるか否か・どこに掲載されるかが決定される「オークション」に参加する必要があります。
オークションは、検索広告ではキーワード、ディスプレイ広告や動画広告などではオーディエンスのように、広告主が決めた出稿先の中で発生します。
では、例えば検索広告において、ある特定の検索語句に対してオークション参加できるキャンペーンが複数ある場合はどのような挙動になるかというと、いずれか1つのキャンペーンや広告グループの広告だけが表示されます。(同一アカウント内で複数キャンペーンからの広告が同時に表示されることはありません。)
表示される広告は、品質、入札単価など5つの要素を複合的に判断し、オークションに勝ちやすいものが選ばれるため、設定や入稿内容を大幅に変更しないかぎり、特定のキャンペーンに配信が偏ることになると考えられます。
結果、配信が伸びないキャンペーンが発生し、学習が進まず、獲得効率などの低下につながる可能性が出てきます。
参考:Google広告のオークションの仕組み(Google公式サイト)
広告アカウントを統合するメリット
管理工数の節約
アカウントを1つに統合することで、管理がしやすくなることはメリットの1つとして挙げられるでしょう。
請求管理や広告主の承認など、適切な広告配信をするにあたり媒体社から求められる諸対応があります。広告アカウントが1つであれば、これらの対応は1度だけで済ませられるため、工数の節約になります。
同じCV設定やオーディエンスリストが活用できる
CV設定やオーディエンスリスト、アップロードできるオフラインCVデータなど、それぞれのアカウントで共有したい設定やリストを活用することも、アカウントを統合していれば可能です。
ただし、オーディエンスリストはMCC配下の全アカウントで共有することができるので、必ずしもアカウントを1つに統合する必要はありません。
社外ユーザーのような公開したくないユーザーがアクセスできる場合など、社内の事情によりMCCでの共有を避けたい場合はアカウントを統合する必要があるため注意が必要です。
参考:クライアントセンター(MCC)アカウント: ウェブサイト訪問者とアプリユーザーを含むオーディエンスセグメントを共有する(Google公式サイト)
広告アカウントを統合するデメリット
同じKWに対して1つのキャンペーン・広告グループの広告しか配信できない
前段でもご説明した通り、1つのオークション対象に対して1つのアカウントからは1つのキャンペーンまたは広告グループからしか出稿できません。
例:レディースの洋服を販売しているアパレルECで複数ブランドを同一アカウントで管理している場合
「靴 東京 女性」の検索語句に対してブランドA、Bのキャンペーンそれぞれでオークションに参加しても、表示できるのは片方のキャンペーンの広告のみとなります。
オークションに参加しやすいのは、広告の品質や入札単価などが高いキャンペーンや広告グループの広告になるため、その他のキャンペーンや広告グループのインプレッションが伸び悩む可能性があります。
参考:Google広告アカウントでのキーワードと検索テーマの優先順位付けについて(Google公式サイト)
広告アカウントを分割するメリット
ドメイン単位でのコントロールがしやすい
例えば同サービスで異なるドメインを1つの広告アカウントで運用していてどちらか一方のドメインでの最適化が進んだ場合、もう一方のドメインの配信が伸び悩むケースがあります。
そのような場合に、ドメインごとに広告アカウントを分割することで伸び悩んでいるほうのドメインのパフォーマンスを改善できることがあります。
予算の管理がしやすい
複数サービス(ドメイン)を1つの広告アカウントで運用していて、サービスごとに予算を振り分けている場合、予算管理や請求処理が複雑になりがちです。
アカウントをわけることで予算のコントロール、請求処理が簡単になり管理工数の削減ができます。
広告アカウントを分割するデメリット
CPCの上昇
異なるアカウントから1つの検索語句に対してオークションに参加するということは、オークション上で「競合アカウント」になることになります。
急激にCPCが上昇することは少ないと考えられますが、中長期的にみてCPC上昇につながる可能性があります。
(サービス名が全く同じ場合)ユーザーの混乱
サービス名が重複している場合において、2つ以上の広告が同じ画面内に表示されれば、ユーザーからは「同じ企業の広告が2つ以上表示されている」現象が起きているように見えると考えられます。
ユーザーの混乱を避けるために、サービス名が異なる場合や店舗名が異なる場合は明記し、差別化することをおすすめします。その際、広告文も各アカウントに最も適した内容にしておくと良いでしょう。
広告アカウントを分割・統合する際に注意すべきポイント
続いて、広告アカウントを分割・統合する際に注意すべきポイントをお伝えします。
方針決定時に目的、優先事項、起こりうる懸念の共通認識を持つ
アカウントを1つにする、または分けることは、広告の配信成果に対してインパクトの大きい変更です。
それまで蓄積していた学習データがリセットされることにより、新規媒体を開始するときと同様に、媒体にデータを蓄積させるところからスタートし、初動は変更前よりも成果が低下することが考えられます。
変更背景を知らず、成果だけ見た場合には、一時的であれ成果低下に対してネガティブな印象をもつのではないでしょうか。
その際、分割・統合後の成果の良し悪しを判断する明確な軸を設け、関係者で合意できていれば、「今後の成果最大化につなげるための判断」として、機械学習による最適化が進むまでの一時的な成果低下として許容することもできると思います。
また、意図通りに配信量が増えた、工数の節約ができたなどの成果を得るケースのほか、変更前より成果が悪化してしまった、意図通りに挙動しなかったワーストケースを想定し、予め対策を検討しておくことでスムーズに方針転換でき、インパクトを最小限に抑えることもできると考えられます。
広告アカウント新設する場合の準備工数を考慮する
これは、広告アカウントを分割する場合にのみ当てはまりますが、アカウントを新設する際の準備工数は考慮して進めましょう。
アカウント新設の際、アカウントの審査や請求先の登録、媒体タグの設置、コンバージョンやイベントの設定、オーディエンスリストのアップロードなど、過去配信していたアカウントとほぼ同じ条件にするための準備が必要です。
一度整えてしまえば発生することはないですが、設定不備による計測ミスや比較対象になるアカウントと条件が異なることによって検証し直し…などが起こらないよう、丁寧に確認しながら進めることをおすすめします。
なお、これは休眠アカウントで配信を再開する場合も同様です。休眠アカウントの場合は、各種設定を必ず確認し、意図していなかった設定がないように把握しておきましょう。
休眠アカウントとは
広告アカウントの開設後、何らかの事情で広告配信を停止しているアカウントのこと
広告アカウントを分割・統合する影響を比較検証する場合、できるだけ「変数」を少なくする
打ち手の後には成果を比較検証し、実施した施策の是非を判断することで成果最大化につなげられると考えていますが、その際、「何を変更したことによる影響なのか」をより正確に把握するために、可能であれば変数を少なくする必要があります。
アカウント分割、統合のケースでは、アカウント以外の要素、つまりキャンペーン構成やキーワード、ターゲティングなどを揃えることで、変数をほぼアカウント変更に絞ることができます。
ただし、想定されるデータ量によっては入札戦略を自動から手動にする、他キャンペーン、アカウントとの極端な重複を避けるためにターゲティングや広告で差別化する、といった調整は必要だと考えられます。
各広告アカウントの状況や優先したい事項に応じて調整しましょう。
分割した広告アカウントを再統合する際は「Equivalent設定」も検討する
元々1つに統合していた広告アカウントを2つ以上に分割した後、1つにまとめた方が成果が良いと判断される場合もあるでしょう。
その場合の打ち手として、分割後のアカウントを停止し、元のアカウントで広告配信を再開させる他、Google広告では「Equivalent設定」を活用することも可能です。
Equivalent設定とは、広告アカウント同士を同一のアカウントとしてみなすGoogle内部の設定です。広告アカウント同士を同一のアカウントとしてみなすことにより、例えばオークションでの競合による CPC の上昇や、複数のアカウントで同じドメインを配信することによるポリシーの抵触を排除することができます。
本設定の注意点は2点です。
- Equivalent設定をした全アカウントで配信に影響が生じる
- 影響が出るのは主にインプレッション量とされています。
- 本設定をしたキャンペーンは同一アカウントの別キャンペーンとして挙動するような状況になるため、インプレッションの急な減少や増加が起こる可能性があります。
- 広告主では設定できないため、Google担当者に問い合わせが必要
- 管理画面から設定できるものではなく、Google担当者に問い合わせ、同意書を記入した上で設定できる仕様になっています。
- また、本設定は2024年1月現在、公式ヘルプページには記載がありません。そのため、検討の際はGoogle担当者に設定の詳細を確認のうえご検討ください。
まとめ
本文で解説した通り、広告アカウントの分割・統合に関しては明確な答えはありません。
入札戦略やターゲティングの変更と同様に、広告アカウントの分割・統合も検証前提で自社の目的に合致する方法を見つけることが重要です。
広告アカウントの分割・統合はアカウントの配信成果に大きな影響を与える変更要素でもありますので、変更する際は事前に何を検証したいのか、検証を終了する基準は何か決めておきましょう。
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