サイト訪問者の意図をベースにCTA改善を行い、MQL獲得率を1.3倍に向上させた事例
本記事では、法人向けSaaSのMQL獲得を目的としたCTA(コール・トゥ・アクション)改善の事例をご紹介します。サイト訪問者の意図をベースにCTA改善を実施し、MQL獲得を1.3倍に増加させた取り組みを解説します。
デジタルマーケティング担当者やBtoBマーケティングに携わる方々に向けた実践的な内容となっていますので、ぜひご覧ください。
(BtoB事業者におけるCTA改善の方法については以下の記事にまとめていますので、CTA改善のお作法について学びたい方は以下の記事からご覧ください)
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目次
事例の要旨
取組みの当初は、WebサイトのCVR(コンバージョン率)が低いことが原因で、MQL獲得が目標に対して下回っている状況でした。
目標達成の期日までに時間的な余裕がなかったこともあり、スピーディーに行えるCTA改善を企画。
A/Bテストにおいて、テストパターンのCTAではサイト訪問者の意図を反映した訴求を行い、従来のCTAよりもCVRおよびMQL獲得率を高めることができました。
事例の詳細
1.前提条件
- 業種:バックオフィスを対象とした法人向けSaaS
- CVポイント:資料請求
- KPI:MQL、CV、フォーム遷移
※MQLの定義:「従業員11名以上の法人」かつ「経営者・役員」または「労務・経理・人事の担当者および責任者」のリード
2.施策の背景
クォーター中盤に差し掛かった時点で、オーガニック検索からのMQL獲得数が目標を下回っていました。これは、クォーター序盤に実施したサイト改善の効果が期待通りではなく、コンバージョン率(CVR)が低迷していたことが主な原因として考えられました。
このままではクォーター終盤までに目標達成が難しいと判断し、2〜4週間程度でスピーディーに仮説検証が可能な施策が必要でした。
3.課題設定とスケジュール
WebサイトのCVRが低いという問題に対して、スピード重視で実行できる施策に絞り込み、以下2点を注力領域に設定しました。
- CTAの改善によるフォーム遷移率の向上
- 資料請求ページの改善によるフォーム通過率の向上
まずは、よりスピーディに実施できるCTAのA/Bテストを優先し、以下のようにスケジュールを設定しました。
4.当初の仮説
これまでにもUI観点でのA/Bテストは実施していたため、今回は新たに「サイト訪問者の意図」という観点をCTAに取り入れることで改善の可能性があるか検討を行いました。
この段階での初期仮説としては、
「サイト訪問者の意図に応じて資料請求ページのCTAコピーを最適化すればMQL獲得が増やせるのではないか?」
と仮説立てしていました。
5.実施した施策
⑴仮説のブラッシュアップと蓋然性の評価
まずは、サイト訪問者の意図を把握し、仮説のブラッシュアップと蓋然性を評価するためのリサーチと分析を行いました。
実際に行ったリサーチと分析は以下の通りです。
- GA(GoogleAnalytics)によるアクセス分析
- サイト訪問者のページ遷移を確認したところ、TOPページから遷移する割合が多いのが「料金プラン」と「機能」のページでした。
- また、「TOPでCVせず機能または料金プランのページに遷移した訪問者」と「TOPでCVせず機能や料金プランのページに遷移しなかった訪問者」のCVRを比較したときに、前者の方がCVRが高いことが分かりました。
- 上記から『サイト訪問者にとってのキーコンテンツは「料金プラン」と「機能」の二つであり、この訴求をCTAに盛り込むことでCVRが高まるのでは?』というように、仮説がブラッシュアップされました。
- 過去の定量調査の結果分析
- 次に過去に実施したことのある「システム導入検討者に対する定量調査」の結果を改めて調べ、上記の仮説の蓋然性が高いのか調べました。
- 「システム導入を検討する際に重視するポイント」の質問項目について、情報収集チャネルを「インターネット」と回答している人に絞り調べたところ、以下の回答の割合が多数を占めていました。
- 料金プランが自社にとって適正かどうか
- 機能が充実しているかどうか
- 機能が使いやすいか
- 上記の結果から、アクセス分析の結果から立てた仮説の蓋然性について「低くはなさそうだ」と評価することができました。
- 競合サイトの調査
- 最後に競合サイトのリサーチも行いました。
- 仮説の蓋然性をできる限り精度高く判断するため、リサーチ対象は「直接競合のサイト」「サイトやA/Bテストを頻繁に行っている(と思われる)」競合のプロダクトサイトとしました。
- 5社の競合サイトリサーチを実施したところ、そのうち3社が仮説と同じように「機能」や「料金プラン」の訴求をCTAに盛り込んでいました。
これらのリサーチ結果から、「サイト訪問者にとってのキーコンテンツは「料金プラン」と「機能」の二つであり、この訴求をCTAに盛り込むことでCVRが高まるのでは?」という仮説の蓋然性はある程度高いだろうと評価し、具体的なA/Bテストの設計に移りました。
⑵仮説検証のためのA/Bテスト設計と実施
まず『サイト訪問者にとってのキーコンテンツは「料金プラン」と「機能」の二つであり、この訴求をCTAに盛り込むことでCVRが高まるのでは?』という仮説を検証するため、以下のようにA/Bテストを設計しました。
コントロールグループである従来のCTAでは、汎用的な訴求である「まずは資料ダウンロード」というコピーを使用しました。
テストグループのCTAでは、サイト訪問者の意図に整合しているであろう「機能・料金プランガイドをダウンロード」にコピーを変更しました。
テストの実施にはGoogle Optimizeを使いましたが、現在はサポートが終了し使用できなくなっているため、今後はVWOなどのA/Bテストツールを使うと良いでしょう。
6.結果
以下がA/Bテストを2週間実施した結果です。
テストグループ(変更後の訴求)では、フォーム遷移率が277.8%に増加し、CVRの向上に寄与しました。
しかし、テストグループではフォーム遷移率が47.2%に減少したため、CVR全体では130.5%への増加に留まりました。
考察・ネクストアクション
今回のテストでは、サイト訪問者の意図を反映したBパターン(テストパターン)の方が、CVおよびMQLの獲得に有効と言えそうです。
今回のテストにおけるCVおよびMQL獲得増加の主要因となる「フォーム遷移率の向上」に対する考察は以下の通りです。
- サイト訪問者にとってのキーコンテンツをCTAで訴求することで「これをクリックした先に欲しい情報がありそうだ」という期待値を醸成することができ、フォーム遷移率を高めることができる可能性がある
- 「まずは資料ダウンロード」などの汎用的な訴求では、キーコンテンツを訴求した場合と比較して期待値を醸成しきれず、フォームに遷移してもらいにくいと考えられる
一方で「フォーム通過率の低下」については以下の考察ができると思います。
- CTAの文言を変更したことで、遷移先の資料請求ページの内容とフォーム遷移の期待値との間に齟齬が発生してしまった可能性がある
- テスト実施時の資料請求ページでは「{プロダクト名}がよく分かる資料」という抽象度の高い汎用的な訴求をしていた
- コントロールグループのCTAでは「まずは資料ダウンロード」という良くも悪くも汎用的な訴求をしていたたため遷移先の資料請求ページがどんな訴求であれ、フォーム遷移者の期待値との間に齟齬が発生する可能性は低い
- テストグループの「機能・料金プランガイドをダウンロード」という訴求では、「料金プランや機能が詳しく分かりそう!」という期待値が醸成されるはずなので、資料請求ページでも同様に「料金プラン」「機能」を訴求することで期待値との齟齬を最小化する工夫が必要だったかもしれない
上記の結果と考察を踏まえて以下のネクストアクションを設定しました。
- CVR向上に寄与したテストグループのCTAコピーを本番環境へ実装(本番環境への実装後はMQL獲得進捗が復調したため、この施策が目標達成に寄与したと言えそうです)
- 今回のテスト結果から「CTAと資料請求ページの訴求を整合させることで、フォーム通過率を高めることができるのではないか?」という新たな仮説を立てることができたため、その仮説検証のための資料請求ページのテストを行う
まとめ
今回の事例では、CTAの改善を通じてフォーム遷移率の向上に成功し、MQL獲得数の増加に繋がったことがわかりました。
CTA改善によるCVR向上を目指す際は、サイト訪問者がCTAをクリックする前後文脈となる「サイト訪問の意図」と「フォーム遷移の期待値」を一連のユーザー体験として把握することが重要です。
目標達成のための具体的な施策のひとつとして、今回の事例が参考になれば幸いです。
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