【Google広告】自動入札の導入により店舗集客数を向上させた事例
Google広告やYahoo!広告などの主要媒体では、自動入札が推奨されていますが、商材や状態に応じて手動入札で運用しているアカウントもあると思います。
- 自動入札で本当に良いのか導入に懐疑的なため、手動入札で運用している
- 自動入札を導入したいが、さまざまな制約条件によって導入できていない
今回は、上記のような悩みを抱えた広告主・運用者の方におすすめの記事です。
今回はとあるクリニック様のアカウントにて、手動入札から自動入札に切り替えて運用した結果、オフラインの来院数が伸長した事例をご紹介します。ここでお伝えしたいキーメッセージは「オフラインCVを学習素材に使えない状況でも、手動入札から自動入札に切り替えて運用することによって、オフラインCVの伸長に繋がる場合がある」ということです。
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目次
自動入札運用で、来院数が伸長した事例
今回はとあるクリニック系のクライアントにおいて、店舗の新規来院数(オフラインCV)を機械学習の学習素材として活用せずに、自動入札運用を導入した結果、WebCVだけでなく店舗の新規来院数が大きく伸長した事例を通して、
- オフラインCVの情報を学習させられない状況でも、自動入札を導入すべきか?
- 自動入札の最適化を行う上で、どのようなアカウント構成・運用調整を行うべきか?
といった疑問について考察をしています。
店舗来客数の拡大を目標としていて、
- 手動入札を運用しており、自動入札を活用すべきか判断しかねている
- セキュリティや実装工数の問題で、オフラインCVのデータを学習素材にできていないが、自動入札を活用したい
場合は特に参考になる事例だと思います。
自動入札とは
まず、事例の詳細についてご紹介する前に、今回の事例を理解する上で重要な自動入札の概念について説明します。
運用型広告における「自動入札」とは、機械学習の技術を活用して、広告を表示する際の最適な入札額を自動で決定する仕組みです。自動入札を使うと、あらかじめ設定した目標や予算に基づいて、システムがリアルタイムで入札価格を調整します。これにより、広告主は市場の変動や複雑なデータ分析に頭を悩ませることなく、広告の効果を最大化させることができます。
また、自動入札では膨大なシグナルを学習素材として機械学習を行い、設定した予算の範囲内で「より成果に繋がりやすい(と判断される)最適化地点」を発見し、事前に設定した目標に最大限近づくような入札を行います。
例えば、Google広告においては以下のようなシグナルが入札単価の最適化にあたって考慮されます。
自動入札で使用されるシグナルの一例
・ユーザーの使用デバイス
・ユーザーのブラウザ、OS
・ユーザーの所在地
・曜日と時間帯
・検索語句(検索キャンペーンとショッピングキャンペーンのみ)
・ウェブサイトのプレースメント(ディスプレイキャンペーンのみ)
・ユーザーのサイト上での行動(ディスプレイキャンペーンのみ)
・商品属性(ショッピングキャンペーンのみ)
出典:Google広告ヘルプ「スマート自動入札について」
*シグナルとは…個々のユーザーやオークション時のコンテキストを特定できる属性のこと
従来の手動入札と比較すると、
- 様々なシグナルに基づいた機械学習が活用できるため入札の精度が高い
- 運用者の手で逐一入札価格を調整する必要がないため運用工数の削減になる
- 目標に応じた入札戦略を使用することでアカウントの目的に合わせた運用がしやすい
自動入札には上記のような特長があります。
何が何でも自動入札の方が良い、といったことではなくアカウントの目的やステータスに応じて手動入札と自動入札を使い分けることが重要です。
事例の詳細
1.本件の概要
- 業種:医療クリニック(店舗数:全国50店舗以上)
- 予算:月8000万円前後
- 媒体:検索・ディスプレイ・DSP・SNS・動画・P-MAX
- CVポイント:広告目標は店舗の新規来院数、WebCVはWebからの来院予約(予約完了+電話タップ+オンライン診療予約)
2.施策実施前の課題
このクリニックでは、予約なしで直接クリニックに来店する顧客が新規来院全体の約8割程度を占めており、全体の約8割ほどのCV(コンバージョン)データが計測できていませんでした。
そのため、自動入札を活用して最適化を行うよりも、運用者の経験を基に入札価格を手動調整する方がより成果に繋がりやすいだろうというクライアントとの共通認識があり、かねてから手動入札で運用を行っていました。
また、配信ボリュームを店舗ごとにコントロールするため、従来は全国に50以上ある店舗ごとでキャンペーンを分けて運用していました。求める広告効果は上げることができていたものの、より効率的に広告効果を上げていくために、キャンペーン設計や入札戦略など広告運用にあたる抜本的な改革を行うことになりました。つまり本件では自動入札への切り替えだけでなく、そもそものアカウント構成の見直しと再構築を行っていきました。
自動入札を活用している場合のアカウント構成の見直しのポイントは以下の記事をご覧ください。
3.課題に対する仮説
まず、これまでのクライアントとの議論やデータ解析の経験から、以下のようなことは分かっていました。
- 衝動性の低い検討期間の長い商材でありweb上での行動履歴は多く溜まっているはずなので、自動入札の導入によってWebCVの向上が期待できる
- 歩留まりはあれど、Web上で事前予約するユーザーと予約なしで直接店舗に来院するユーザーはいずれもアクションに繋がっているため、Web上のユーザー行動に大きな差分がない可能性が高い
- クライアントから「来院したユーザーのヒアリングデータ」を共有いただいたところ、Web上で事前予約する場合もあれば予約無しで来院することもあるなど、同一ユーザーであってもCV地点が異なることが分かった
上記の事実を踏まえ、Web上でコンバージョンするユーザーと直接店舗に来院するユーザーにデモグラフィック的な属性の違いやWeb上のユーザー行動に大きな差分はないのではないかと仮説を立て、今回の検証では予約なしで直接来院するユーザーのオフラインデータを学習素材に使用しなくても大きな支障は無いと判断し、WebCVのみを学習素材として自動入札の運用を行うことにしました。
また、これまでは店舗ごとでキャンペーン設計を分けていましたが、自動入札の導入にあたり機械学習の最適化を進めるための学習データ(Webコンバージョンのデータ)を一定数確保する必要が生じたため、キャンペーン設計から見直す必要があるのではないかと考えました。
4.実施した施策の内容
今回は自動入札の導入にあたり、以下の施策を行いました。
- 主な検証媒体はリスティング広告+(P-MAX)
- 学習データ量を担保するため一部地域のキャンペーンを統合し、店舗ごとの運用から「東京」「千葉」「埼玉」のように都道府県ごとのキャンペーンに統合して運用した
- 地域ごとで成果比較を行い効果検証をするため、「東京」「千葉」「埼玉」「神奈川」の首都圏エリアのキャンペーンのみ自動入札を適用し、その他の地域は店舗ごとのキャンペーンで手動入札運用を続けた
参考:主要媒体の機械学習の最適化に必要なコンバージョンデータの目安
実際は業種やアカウントの目的にもよるため必ずしも下記の基準を満たす必要はありませんが、一般的に各媒体で自動入札を活用する際に必要とされている推奨のコンバージョン数です。
Google広告:
・目標広告費用対効果(tROAS)で運用する場合はキャンペーン単位で過去30日に15件以上のCV推奨
・それ以外の自動入札戦略では媒体の推奨はないが、経験上目標コンバージョン単価(tCPA)を利用する場合は過去30日で30件以上のCVが獲得できないと機械学習が上手くはたらかない可能性が高い
Yahoo!広告:
・コンバージョン単価の目標値(tCPA)を活用する場合は過去30日で最低30件以上のCVを推奨
・目標費用対効果の目標値(tROAS)を活用する場合は過去30日で最低50件以上のCVを推奨
Meta広告:
・広告セット単位で1週間に50件以上のCVを推奨(キャンペーン予算で最適化している場合はキャンペーン単位で1週間に最低50件以上)
※媒体社資料より抜粋
5.施策導入後の結果
自動入札導入前後の学習期間を外した1か月の配信成果を前後比較
自動入札導入後、クリニックの新規来院数は約20%ほど伸長しました。
施策を開始した7月は毎年の季節トレンドとして新規来院数が落ち込みがちな傾向があったのですが、それを加味すると今回の施策はクリニックの新規来院数にポジティブな影響があったことが見てとれます。
6.事例から得られたインサイト
今回の事例において、施策が上手く機能したと考えらえれる要因は、主に2つあると考えています。
要因1.自動入札がはたらきやすいアカウント構成に再構築したこと
まず、施策が機能した要因の一つは、「自動入札がはたらきやすいアカウント構成に再構築したこと」が挙げられると思います。
というのも、前述のように自動入札を活用する場合は、機械学習の最適化を進めるために学習データの母数をある程度担保して実装するのが運用型広告のセオリーです。
今回のクライアントのアカウントでは、それまで各店舗ごとにキャンペーンを独立して運用しており、各キャンペーン単独でのコンバージョンデータが機械学習の最適化目安を満たしていない傾向にあったため、まずは機械学習が進みやすいアカウント構成にするべく、施策の検証対象である首都圏地域の店舗を地域ごとで統合し新たなキャンペーンを作成して運用しました。
また、手動入札から自動入札に切り替えて運用したことで、新規来院の見込みがあるユーザーに対して効率的に広告配信ができたことも成果に貢献したポイントだと考えています。
要因2.WebCVユーザーとオフラインCVユーザーの属性に大きな差分が少なかったこと
今回はWebで診療予約をせずに直接店舗に来院するユーザー(オフラインCVユーザー)と、Webで問い合わせや事前予約をして来院するユーザー(WebCVユーザー)のデモグラフィック的な属性、Web上のユーザー行動に大きな差異は無いだろうという仮説のもと、オフラインCVを学習素材に活用せずに自動入札を導入しました。
結果的にオフラインCVを学習素材にせずとも、WebCVユーザーの情報を学習素材として類似ユーザーに広告配信を行ったところ、新規来院数の伸長につながっているため、事前の読みはある程度正しかったと考えています。
また、今後の展望としては都道府県ごとでキャンペーン統合を行ったことにより配信予算が都道府県ごとに偏りはじめているため、クリニック集客数(オフラインCV)に合わせてコストコントロールできるよう、キャンペーン構成の見直しやオフラインCVのアップロードなどを実装していく予定です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
再掲となりますが、今回の事例でお伝えしたかったことは、
- オフラインCVを学習素材に利用できない場合でも、Web上でCVするユーザーとオフラインでCVするユーザーの間に統計的な属性の違いがあまり見られない場合は、自動入札がはたらきやすいアカウント構成に再構築することで店舗の新規来店数を伸ばすことに繋がる可能性がある
ということです。
今回は医療クリニックのクライアントでの検証でしたが、同じように店舗の新規来店数を伸ばしたいと考えている広告主の方に活用できる部分もあるかと思います。
自動入札の導入を検討している場合は、ぜひ今回の事例を参考にして導入を進めてみてください。
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